〜ピンポーン〜

「入っておいで〜。」

廉の声がインターホン越しに聞こえた。

「おじゃましま〜す。」

中に入ると廉がソファーから立ち、
こっちにおいでと手招きする。

下を向くあたしを抱き寄せて、
「会いたかったよ。凛。」
そう言い、強くギュっと抱きしめる。

「廉?今日は話があってきた。」

廉の胸の中で言うあたしの声は、
少し震えてしまった。

「良くない話なら、
このまま聞くから言って?」

離れようとするあたしを、
強く抱きしめて言う。


「廉ごめんね。
あたし廉にずっと甘えてた。
いつも好きって言ってくれるのに、
こたえることが出来ないくせに、
離れないで廉と一緒にいた。
こんなあたしなのに、
離れないで。って言ってくれる廉に、
ただ甘えてた。
廉は苦しかったよね?悲しかったよね?

気付いてたのに、気付いてたくせに、
あたしは気付かないふりをしてたんだよ。
離れないで。
そんな事、言いたくなかったよね?
好きって言ってって思ってたよね?
わかってるのに、
わからないふりをしてたよ、ずっと。

だけどね?あたし気付いたの。
廉に甘えてちゃダメなんだよ。

廉は、優しくて温かい心を持ってるのに
愛されなきゃいけないのに、
あたしじゃダメなんだよ。

ごめんね。
好きになれないのに、
付き合ってごめんなさい。
甘えてばかりでごめん。」

何度か、抱きしめられながらも、
廉の方を向こうとしたけど、
顔を離す度、胸に押し戻された。

別れて下さい。
その言葉だけは言えなかった。
ハッキリ言わないのはズルい。
でも言えなかった。
抱きしめられてる手が震えてたから。