「凛ちゃん、今日はごめんね。

居酒屋で凛ちゃん見かけて、
声掛けようとしたけど、
結衣ちゃんと話してたの聞いちゃって。

凛ちゃん泣き出しちゃって、
タイミングわかんなくなって、
ナンパみたいにしか声かけれなかった。」

「そっか。会話聞いてたって事だよね?」

下を向いて歩いていたけど、
優くんの方を見上げると、
声もなくただ頷いた。

「でもよくわかったね〜。
あたし5年前と変わらないって事?
大人になった気がしてたんだけど〜。」

笑うあたしに、

「いや、キレイになってるよ。
高校生の頃も可愛かったけど。」

恥ずかしくなり、手を離した。

「あたし優くん覚えてないよ。」

「いーの。俺が覚えてるから。」

そう言うとまたあたしの手を掴んだ。

全部聞かれてたなら、
偽って話す必要はないか。
この人のペースについてけないや。
優くんって名前も聞いたことない。

あの頃あたしなにしてたんだっけ。
どうにか思い出そうと、
5年前の記憶を辿ってみるけど、
何も思い出せない。

無言で手を繋ぎ歩く2人。



正直この時ね、
あなたが怖かった。
あたしの心を
見透かされてる様に感じた。
何を話したらいいのかわからなかった。
顔を見ることも出来ずに、
下を向きただ歩いてたよ。

ねぇ?あなたは何を思ってた?