はぁ。
そう大きな溜め息をつき、
暫く鏡をただ見ていた。
あ。
明日、会社に持っていく物があった!
思い出したあたしは、
身支度をし、鍵を閉めた。
親や結衣に、
別れたと連絡しなきゃなと思いながらも、
まだ話す事が出来ないと思い、
携帯は持たずに家を出ていた。
マンションを出ようとした時、
ポストに何か入ってるのが見えたが、
それを取ることなく、
駅の方へ、優のマンションとは逆の方へ、歩いて行った。
化粧をしたけど、
泣いた事が隠せてない気がしたあたしは、メガネをし、帽子を被った。
それでも、
誰も見てないのに、見られてる気がして、
下を向きながら歩き、
急いで買い物をして、また下を向いた。
見られてる気がしたからか、
泣く事なく外を歩いていた。
なんだ。
あたし強いんだ。
もう泣かなくても生活出来るのか。
優がいなくても、
何も変わらないのかな。
いや、違う。
優と一緒に歩いたこの景色が、
今は色褪せて見える。
行き交う人達さえ、同じに見える。
みんな同じ顔をし、あたしを見てる。
みんな、
嘘くさい笑顔を作り、あたしを見てる。
マンションの近くになると、
何故かドキドキとし、
あたしは小走りしながら中に入った。
この、恐怖とは違うドキドキは何?
恋のドキドキではないよ。
今まで感じた事のない、ドキドキ。
いや、動悸。