「おじゃましま〜す。」
いつも通るマンションの三階に、
今あたしはいる。
優くんの家に行くと言ったけど、
いざ中に入るとなると緊張する。
「ど〜ぞ。いらっしゃい。」
笑顔で迎えてくれる。
いや今、一緒に中に入ったのか。
中に入ると、ものすごく綺麗で驚く。
自分の部屋と比べ、少し虚しくなる。
急に来たのに、
こんなに片付いてるなんてすごい。
え?女の子とかに来てもらってる?
あたしは何故かそう思った。
「綺麗すぎてビックリ!
もしかして、
彼女とか元カノとかに来てもらってる?」
思った事をそのまま口にしていた。
「ねえ本当にバカなの?
俺は凛ちゃんが好きなの。
彼女なんていないし、
女をここに入れたことないから!」
すいません。
そう思いながら窓の方へ行き、
外を見てみる。
「ここから見てあたしってわかるの?」
三階から前の道を見ても、
誰かなんてわからないよね。
「初めて見たのは、
エントランスを出た所だよ!
凛ちゃんは上を向いて、
悲しそうな顔して歩いてた。」
「近くにいたんだね。
全く気付かず歩いてたよ。」
「でも今もっと近くにいるじゃん。
俺は幸せだよ。」
やっぱり恥ずかしい事をサラリと言う。
あははと空笑いをするしか出来ない。
「そこ座ってて。ビール飲もうよ!」
「いいね〜!飲もう!」
恥ずかしさを隠す為に明るく言う。
ソファーに座りキョロキョロ見回す。
綺麗なんだけどなんか殺風景。
余分な物がないと言うのか。
引越してきたばっかりなのかな?
ビールを持って帰ってきた優くんに聞く。
「いつここに引越してきたの?」
「2年前位だよ!」
え?そんな前なの?
そんな頃からあたしを知ってたの?
聞いてさっきより恥ずかしくなった。
いや、申し訳なくなった。
部屋は殺風景なんかじゃなく、
あたしの部屋が汚いだけなんだよね。