席に戻ると、
オーナーさん達はいなくなっていた。
知らぬ間に満席状態の店内。

「優くん話がある。」

顔を見ずに小さな声で言う。

「俺も話がある。
でもここじゃなくて出てから言う。」

そう言う優くんにイラっとした。

「あたしはここでいい!
ねえ?なんなの?何が本当なの?
あたし全く理解出来てない。
ここに来てから、
優くんの言ってる事が全くわからない。

わかったのは、
日菜子ちゃんが素直ないい子って事と、
優くんは嘘つきって事と、
あたしは平気な顔して、
人を傷付ける嘘が言えるって事だけ。」

悲しいというか、虚しくなる。

優くんが何か言ったが周りの音に消され、聞こえなかった。
だけど、
聞き返す事なく、
頼んであったご飯を黙々と食べた。

この時、なんとも言えない感情だった。

悲しいのとムカつくのと虚しいのと、
ほんの少しのドキドキと。

でもそのドキドキは、
真実を知るのが怖くてだった。

あたしはあなたを何も知らない。
名前と住んでる場所とこのお店と、
嘘つきな男だと言う事だけは確かな事。