そこには、手描きで書かれた解剖図と…臓器のスケッチ…それに、各味と…感想が書かれていた。


「私はねえ……。私の星M88星雲にある…星から来たんですよ!人の体と……人が、我々の食糧になりうるのか…調べる為に…」

男の口から、涎が流れた。

僕は、フローリングされた床に溜まった血の中に、転がるものを発見した。 

僕は血溜まりに、足をつけ、そこにつかっているものを手に取った。

携帯だった。

見上げると、若い女が吊らされていた。

「ああ…そいつは、さっきの茶店のそばで、会ったんですよ。私を気持ち悪そうに…見たもので…」

僕は、携帯を開いた。

「ちなみに…隣に並んでるのは、家族です。まあ…家族と言っても、仮初めですよ。この星にいる為に、家族にしただけです」



携帯の…最後のメールをチェックして、僕は悔しさで、唇を噛み締めた。

「まだまだ…研究は終わりませんよ。男と女でも、味が違うし……年齢でも…」

「なぜ…殺した…」

僕は絞り出すように、言葉を発した。

(助けられ…なかった…)

「え?」

男は、目を丸くし、

「殺したとは、失敬な!研究ですよ。敢えて言うなら、食べた……味見した…ですかね」

飄々と言う男に、僕は振り返って、睨んだ。

「この子に、罪はなかったはずだ!家族だって…あんたを産んでくれただろ!」

「ち、ちがう!ちがう!それは…地球で、活動する為に、植え付けた記憶で、私は、こいつらから生まれてませんよ」

「き、貴様…」

「でないと……」

男の右目からだけ…涙が流れた。

「私のこの……食欲はなんですか?」

男の姿が、変わる。

口が裂け…見る見ると猛禽類を思わす…肢体に変わっていく。

「この姿は!私は、地球人ではないのですよ!そうでないと…」

虎を思わす姿は、人間ではなかった。

「私は、何ですか?」