その中から、現れたのは、一糸も纏わない裸体。

体を包む闇より、黒い髪に、切れ長の目に、豊満なバスト。 

「女!?」

重力を無視したように、上を向いたバストを強調し、ラルは空中で立っていた。

その姿は、人間そのものだが…口が2つあった。顔と、お腹に。

「我は、魔王ライの分身にして、女神達の母なる存在。闇の女神、アマテラス」


「アマテラス…」

「異世界では、天照らすらしいが…。我が、照らすものは、闇!」

「フン」

アルテミアは鼻を鳴らすと、ライトニングソードから、トンファータイプへと変えた。

「そんな無防備な体で、大丈夫なのかよ」

そして、両手を天に、突き上げた。


アルテミアの両手に、風神と雷神が降りてくる。

両目が赤く光り、口元から牙がこぼれた。

「くらえ!」

アルテミアは、両手をアマテラスに向けて、突き出した。

「空雷牙!」

アルテミアの両手から、地球のすべての雷を集めたくらいの雷撃が、放たれた。

アマテラスは口元を緩めながら、避けることはしなかった。

直撃した。いや、通り抜けた。

アマテラスの遥か後ろにある山脈の半分近くが、一瞬で消え去った。

万年雪が積もっている程の結構高い山々が、消えたのだ。

「威力は凄いけど…」

目の前のアマテラスは、肩をすくめ、

「当たらなければ、意味がない」

今度は、耳元から囁かれた。アルテミアが、振り向くと、右側にアマテラスがいた。

「あなたの空雷牙は…魔王のと、根本的に違う」

今度は、左側にもアマテラスがいた。

「3人!?」

幻影でなかった。確かに、3人いるのだ。

「注意力もね」

左右のアマテラスは、手刀を繰り出すと、アルテミアの手からチェンジ・ザ・ハートを奪い取った。

「魔王の技は、空間さえも破壊する。目に見えないものも」

左右のアマテラスは、腹にある口の中に、チェンジ・ザ・ハートを入れると、口をつむんだ。

「何をする」

アルテミアは蹴りを放ったけど、足は…アマテラスの体を擦り抜けた。

「ククククク…。我の体は、こことは違う空間にある」