ラルがクククククと笑うと、体が反転した。

後ろが前になり、アルテミアの目の前に、口があった。

口はそのまま裂け、アルテミア一メートルくらいの大きさになると、アルテミアを飲み込んだ。

口の中に、宇宙が見えていた。

「ハハハ!馬鹿目!」

ラルは、口を元の大きさに戻すと高笑いした。

「この中は、亜空間と繋がっている!お前は、二度と戻ってこれない」

笑いが止まらないラルは、突然口許を押さえた。吐き気をもよおしたように、嗚咽する。

ふさいだ口から、光りが漏れだし、唇の間から剣先が飛び出してきた。

そのまま、剣を立てると一気に、唇を切り裂いた。

剣から漏れる光りが、ラルの真っ黒な体に染み込んで、輝きだす。

「ぐぇ!」

ラルの口が大きく開き、光りを吐き出した。

光輝く球体は、蜜柑の皮が剥けるように開き、六枚の翼になる。

「アルテミア!」

アルティメット・モードとなったアルテミアは、ライトニングソードを構えていた。

「その剣は!」

ラルには、見覚えがあった。ラルは、唇から血を流しながら、苦々しく呟いた。

「ライトニングソード…」

黄金に輝くアルテミアの鎧とライトニングソードに呼応するかのように、傷口から、光が血管のように、ラルの体を走った。

「おのれ、ティアナめ」

ラルを形作り闇が、球体になり、口だけが真ん中についていた姿で空中に浮かんだ。

「何だ?」

予測不可能な動きに、アルテミアは指を突き出し、雷鳴を呼んだ。

空が一瞬にして、雨雲に包まれ、雷がラルに落ちた。

しかし、雷は口の前に、飲み込まれた。

「アルテミアよ…死ぬ前に、お前に、我の本当の姿を見せてやろう」

アルテミアは、何度も雷を落とすが、すべて口から吸収される。

「無駄だ!この闇のコーティングは、破れない!しかし…」

球体となったラルの体にヒビが入る。

「このコーティングを脱いだ時、真の絶望が始まるのだ」

口の部分が、球体の内部に潜り込んでいき、その部分を中心として、ヒビが大きくなり、卵の殻のように、闇が割れていく。