「このままじゃ…ヤバイ」

アルテミアは、攻撃を避けながら、打開策を考えていた。

しかし、思い浮かばない。

(殺すか)

頭に浮かんだ言葉を、アルテミアは首を振って否定した。


「まだ余裕があるか…」

ラルは口元を緩めると、結界内にいる兵士に告げた。

「ポイントに余裕がある者も、ない者も…」

ラルの瞳が光った。

「自爆せよ」

その命令に、兵士達は、カードを取出し、

「了解しました」

シークレットコードを打ち込んだ。

「馬鹿な」

アルテミアは、唖然とした。

兵士達の体が赤く光り、血が暴走する。

「やめろ!」

アルテミアの叫びも虚しく、兵士達は自爆した。

同時に爆発した魔力の暴発は、互いに共鳴し、狭い結界内を、爆風と衝撃波が踊った。

「やったか?」

ラルは結界を解くと、爆風でできた煙の中に、アルテミアの気配を探った。眉をひそめ…やがて、フッと笑った。

「この程度では、無理か」


「うおおおっ!」

煙を切り裂いて、アルテミアが飛び出す。チェンジ・ザ・ハートを槍に変え、

「Blow Of Goddess!」

女神の一撃を放つ。

「無駄だ」

フードの下の白髭をたくわえた口が、大きく開き、

アルテミアの雷撃も、カマイチも飲み込んだ。

「我に、魔法は通じない」

まるで、大きなトンネルの入り口くらいの大きさになっていた口が、もとに戻る。

ラルは、ゲップをすると、アルテミアの姿を探した。辺りから、煙が晴れても姿がないのだ。

ただ兵士の残骸が、散らばっているだけだった。


いきなり、凄まじい突風が、頭上からラルを襲い、フード付きのコートを切り裂いた。

「上か!」

ラルが顔を上げると、
空には太陽しかいない。

「残念」

アルテミアの声が、真後ろから聞こえた。

「何!」

ラルが振り替える前に、ドリル状に、回転した槍を、背中から心臓に向けて突き刺す。

「やったか?」

しかし、槍から伝わる感触がない。まるで、空気を突いたような。

「惜しいな」