「だからこそ…」

哲也の後ろから、黒マスクの集団が現れ、九鬼を囲んだ。

「少し犠牲は仕方がないのだよ」

「何!?」

「月の女神は、約束してくれた。貴様を殺せば、味方になると!そして、我に告げた!結界内の人間の命を捧げることで、月への道が開くと」

哲也は月を仰ぎ見た。

「女神は告げた!月には、あの武器があると!」


九鬼を囲んだ黒マスクの集団は、十夜と同じ刀を持っていた。

ムーンエナジーを受けて、刀身と目が輝いた。

「チッ」

一斉に、九鬼に襲いかかる。

「それは、この世を支配できる力!魔王をも倒せる力!バンパイアキラーだ!」



「バンパイアキラー…」

恍惚の表情を浮かべる哲也の発した言葉を、繰り返した九鬼。

何とか攻撃を避けているが、数が多すぎた。

それに、ムーンエナジーを纏った刀身は、乙女ブラックの戦闘服を斬ることができた。

「バンパイアキラーを手にした時、我々防衛軍が、世界を支配する時となる」



「ふざけるな!」

九鬼の両手が光った。

そして、舞うように回転すると、襲いかかっている黒マスクの戦闘員達の刀が一斉に折れた。

それだけではない。

足から鮮血がふき出して、戦闘員達は倒れた。

目にも止まらないスピードで飛んでいた光のリングが、九鬼の両手に戻ってきた。

「こ、これは、乙女グリーンの技か!!」

哲也は表情を歪め、足を斬られて動けなくなった戦闘員を睨んだ。


「お前達は、人々を守る為にいるんだろうが!それを!」

九鬼は、両手をクロスさせた。

「ほざけ!人が死ぬくらいならば、それは警察のやることだ!我々防衛軍は、さらなる上を扱っておるのだ!」

「人が死ぬくらいだと!」

九鬼はキレた。

そして、再び舞った。

「人々を守れない者が!防衛軍を名乗るな!」

光速で舞う光のリングが、哲也に向かって放たれた。

「馬鹿目!大局も見れぬ!小娘が!」

哲也が叫んだ瞬間、全身から光が放たれ、

光のリングは消滅した。