「美和子さん…あなた」

九鬼は、美和子の瞳に違和感を感じていた。

そこから、溢れているのは…紛れもなく、ムーンエナジーだったからだ。


「気づいたかしら?私の目を!」

美和子はにやりと笑った。

「コンタクトをつけているのよ。でも、それは…ただのコンタクトではないわ」

そして、上空の月を見上げた。

「これは…あなたがつける眼鏡のレンズと同質のもの。このコンタクトを直接目につけることにより、肉体そのものを、強化できる!」

「美和子さん…」

「その力は、乙女ソルジャーに匹敵する!」

美和子は、生身の九鬼に襲いかかってきた。

「そのコンタクトが、量産化されれば!人類の戦闘能力は、格段に上がる」

「…」

無言になった九鬼は、一瞬で目の前まで移動してきた美和子の拳を、しゃがんで避けた。

そして、美和子の腕の中に入ると、自然の動きで立ち上がり、肩を軽く美和子の体に当てると、そのまま風車のように、美奈子を投げた。

今の一連の動きに、力は殆ど使っていない。

「舐めるな!」

着地する瞬間、背中からの激突を避けようと、美和子は足から床についた。

その動きがいけなかったのだろう。

すぐに立ち上がり、九鬼に攻撃を仕掛けようとしたが、美和子はバランスを崩し、床に膝をついた。

「え」

目を見開いた美和子は、やっと…自分の体に起こった変化を知った。

「足が折れている」

美和子の右足首が骨折していた。

九鬼は、膝をついている美和子を見下ろし、

「今の投げは、あたしの力は使っていない。あなたの力が、足にかかったのよ」

「ば、馬鹿な…」

立ち上がろうにも、足首に激痛が走り、無理だった。

九鬼は哀れみの目を向け、

「月影の力で、身体能力は上がっても…肉体が強化される訳ではないわ」

「き、貴様!」

美和子は九鬼を見上げ、睨んだ。

「だから…あたし達は、肉体を鍛える。それでも、補えないから…戦闘服を身に纏うのよ」