次の瞬間、

リオの目の前で、

理香子はフェンスを飛び越えると、

そのまま地面に向けて飛び降りた。


「な」

唖然とするリオが立ち上がるより早く、

フェンスの向こうが輝いた。

その眩しさに、リオは一瞬視界を奪われた。






「キイイイ!」

地面に激突した男はよろけながらも、すぐに立ち上がった。

「小娘がああ!」

男は、屋上を見上げた。

「絶対!犯してやる」

壁をよじ登る為、視線を屋上から前に向けた男は、

思わずたじろいだ。

「な!」

なぜなら、目の前に理香子が立っていたからだ。

「き、貴様!」

平然と立つ理香子に、恐怖を覚えた男は、後退った。


「闇は許さない!」

理香子の前に、乙女ケースが浮遊していた。


「装着」

乙女ケースが開き、眼鏡が飛び出す時、

変身の為に溢れた光が、男を照らした。


「な」



光を浴びた瞬間、

男は消えた。


消滅したのだ。

細胞一つ残さずに。




「うわあああ!」

乙女プラチナに変身した理香子は、

男が消滅した空間に、拳を突きだした。

もう何もないが、空気が切れる音がした。


「許さない」

眼鏡をかけた理香子の瞳から、

涙が流れた。





「理香子…」

理香子の涙の裏に、

1人の男が浮かぶ。

悲しげな目を向ける…1人の男。

「ごめん…」

ゆっくりと倒れる男。


(ああ…)

理香子は嗚咽した。


地面に横たわった男の後ろに、血塗れの拳を握り締めた…




乙女ブラックがいた。


(真弓!)

理香子は、絶叫した。

(どうして!中島を!)



乙女ブラックはこたえない。

ただ血塗れの拳を突きだした。


(真弓!)

理香子も拳を握り締め、

(許さない!)

乙女ブラックに向かって、ダッシュした。


(うわあああ!)


理香子の拳と、血塗れの拳が交差した。


そして、その瞬間、


すべてが爆発した。