「服が…ボロボロになったわ」

シュナイザーの肉体が砂のように、崩れ落ちると、

そこから、真っ赤なドレスを身に纏った女が、現れた。

女の言うように、ドレスはボロボロになっていない。

異様過ぎる気に、輪廻の体に緊張が走る。

「綺麗でしょ?」

砂の中から、現れた女はクスッと笑った。

はち切れそうな胸元を、強調するドレスは、見たこともない程鮮やかな赤だ。

いや、あるか…。

ドレスに目を細めた輪廻に、女は言った。

「このドレスの色は、血よ。どんな染料を使っても、決して出すことのできない色。あたしから言わせれば…人間が持つたった一つの…美しいものよ」

「貴様!」

輪廻は、ネクタイを握り締めた。

「あらあ…。勘違いしないでね。このドレスを染めた血は、ただ人を殺したではないの!」

女は、ドレスの裾を持ち、お辞儀した。そして、上目遣いで、輪廻を見、

「私の美しさに、男達が自らの血を捧げたのよ」

微笑むと、 

「いわば…愛と忠誠の証!我がクレアへの永遠の印!」

ブロンドの髪を上に束ね、蒼き瞳を持つバンパイア…。

ファイブスターの1人…殺戮のクレア。

「ちょうど…夜が来たわ」

クレアは、体育館の窓を見上げた。

もう日は落ちていた。

「あたしの時間が始まる…。そして」

クレアは、いつのまにか輪廻の後ろに移動していた。

「あなたには、長い絶望の時…。一瞬の死は、用意できないの」

クレアの手から放たれた光線が、輪廻の背中めがけて、炸裂した。

まるで花火のように。

「この国で、花火だけは褒めてあげるわ」

体育館中に、閃光が走る。

「一瞬で咲き!一瞬で消える!それは、この国自身のような儚さ!」




「なるほど…」

クレアの真後ろから、輪廻の声がした。

「あんたなら…願いが叶いそうだ」

輪廻は笑った。

虚をついて、真後ろに回った輪廻は、ネクタイを背中に突き刺した………はずだった。

ネクタイは、クレアの皮膚を傷つけただけで、突き刺さらなかった。