「機械か…くだらん」

輪廻はゆっくりと、人造人間の影から、姿を見せた。

「機械などに頼ってどうする?私の世界では、魔法の補助でしかなかったわ」

無傷の輪廻が、ステージ上から、シュナイザーを見下ろした。

「この世界では、魔法は使えないんだがな」

輪廻は右手の人差し指と中指を立て、他の指を丸めて、手剣をつくり、

「郷にいれば…郷に従えだ!精霊や妖精がいないなら…。この世界の自然なら、力を借りる!」

輪廻は素早く、九字を切る。

「臨兵闘者皆陣列在前!」


シュナイザーは笑い、

「この程度の呪印で、我を退けるかあ!」

赤く光る瞳が、輪廻を射ぬいた。

と瞬間、輪廻はシュナイザーの視界から、消えた。

「どこに?」

「これは、退魔の術だけであらず…」

輪廻は、シュナイザーの真後ろにいた。

輪廻は、手をシュナイザーの背中に当てた。

「肉体を強化することもできる」

「い、いつのまに?」

シュナイザーは振り返ろうとしたが、体にのしかかる時の重さが、シュナイザーを床に跪かせた。


「老いろ……そして、朽ち果てろ…」

輪廻の長い睫毛の下にある瞳が、妖しく光った。


「ク、クレア様!!!!」 

シュナイザーの顔が、皺だらけになり…やがて、乾き…水分がなくなっていく。

輪廻は手のひらから、時の粒子がシュナイザーに流れ続ける。

シュナイザーの体が、砂のように朽ち果てるようになると、輪廻は手を離した。

「五百年は…たったか…」

少し疲れたように、額に浮かんだ汗を拭いながら、輪廻は何か違和感を覚えた。

すぐに、顔を引き締め、輪廻はミイラと化したシュナイザーと、距離を取った。

もう息はしていないのに、シュナイザーから、尋常ではない気を感じた。

いや、詳しくはシュナイザーからではない…。彼の中からだ。

輪廻は、腕に巻き付けていたネクタイを、再び硬化させた。

「誰だ?」

輪廻はネクタイを構えた。