「甘い!」

シュナイザーは頭上を背面飛びのように、こえていく輪廻を見て、笑った。

空中で回転し、着地しょうとした輪廻の両足を、巨大な手がつかんでいた。

輪廻は空中で、引き戻されるような力を感じて、絶句した。

シュナイザーの前にいる…人造人間の手だけがない。

手だけが飛んできて、輪廻を空中で捕まえていたのだ。

「やれ」

シュナイザーの命令に、人造人間は回転しだす。

すると、足をつかまれている輪廻も空中で、回転しだした。

ジャイアントスウィングのように、回された輪廻は、体育館のステージ向けて、投げ捨てられた。

ステージにあった教壇に、輪廻は当たり、教壇は吹き飛んだ。

「やれやれ…」

そう様子を見たシュナイザーは肩をすくめ、人造人間を見た。

無表情に立つ人造人間。

「あまり血を流させるなよ。あれは、クレア様への大切な貢ぎ物なのだからな」

手はまるで、吸い取られるように、人造人間のもとの場所に戻ってきた。



「さて…死んだかな?」

シュナイザーは、顎で人造人間にステージに向かうように、促す。

再びモーター音を轟かせ、人造人間は一瞬にして、ステージ前に着き、軽くジャンプすると、上に上がり、輪廻がぶつかった教壇に近づく。

「死んでいるなら…そのまま連れてこい!死んでないなら、死なない程度に破壊せよ」

人造人間は、シュナイザーに背中を向けたまま、頷いた。

両手を、瓦礫と化した教壇の辺りに向ける。

じわじわと追い詰めるように、近づいていく。

「いるのか?状態はどうなっている」

きいたシュナイザーの目の前で、突然人造人間の体が、軋みだした。

背中が、小刻みに震えている。

「どうした?」

人造人間は振り向こうとするが、なかなか首が動かなかった。

教壇に向けていた両手が、付け根から取れ、床に鈍い音を立てて落ちた。

何とか首だけを向けた人造人間の…顔が錆びていた。

「な!」

シュナイザーは絶句した。

錆は、全身に広がり…やがて人造人間は動きを停止した。