シュナイザーは、輪廻を体育館まで連れてきた。

普段は、部活に使われている体育館内には、誰もいなかった。


今日は…日が落ちるのが、早い。

体育館の窓から、館内にこぼれる黄昏の光が、赤い空間を作り出していた。


体育館の真ん中で、シュナイザーは足を止め、靴を鳴らすように足を真っすぐにすると、くるっと半回転した。

「我々は、回りくどいのが、嫌いでね〜え。単刀直入に言おう」

外人特有の訛りもなく、流暢に話すシュナイザーに、輪廻は眉をひそめると、ゆっくりと間合いをはかった。

相手が、どう来るであれ、対処できる距離はある。

輪廻は、ネクタイをセーラー服から抜き取ると、手に持ち、床につけた。

「はしたないな…。日本の女性は、奥ゆかしいと聞いていたが…」

シュナイザーは、睨む輪廻の瞳を見返し、

「こんなに攻撃的とは…」

軽く肩をすくめた瞬間、 

輪廻は一歩踏み込み、ネクタイを上に向かって払った。 

ネクタイは、円を描くように下から、上へ跳ね上がる。まるで、鞭のように。

シュナイザーは軽く後ろに下がり、ネクタイを避けた。

鼻先をかするように、ネクタイは通り過ぎた。

と同時に、さらに踏み込んだ輪廻の顔が、シュナイザーの胸の近くまで来た。

懐に飛び込んだ輪廻は、右手に力を込めた。

すると、鼻先をこえたネクタイが硬質化し、鋭い光を発しながら、今度は立てに振り落とした。

シュナイザーは驚きながらも、体の位置を変えることができた。

シュナイザーの右肩から、胸までに鮮血が走る。

その鮮血が飛び散る前に、輪廻は肩を引き、シュナイザーの心臓に、ネクタイを突き刺そうとした。

しかし、その攻撃は真後ろから、飛んできた謎の物体に、邪魔された。

輪廻の背中を殴打したのは、巨大な拳だった。

輪廻は体勢を崩しながらも、背中の威力の拡散するように、体をくねらせながら、シュナイザーから離れた。