(うん?)

空牙は訝しげに、その影を見ると、一気に跳躍した。

梓の頭上を、ネクタイを突き立てようとする輪廻をかわし、

一気に、数十メートルジャンプした。

「何という跳躍力!」

輪廻は軽く舌打ちすると、体を回転させ…空牙の後を追おうとした。 


「え!あ…」

何がどうなってるのか…理解できない梓の耳に、次の授業が始まるチャイムが飛び込んできた。

「天道さん!それと…」

空牙の名前がわからない。

それに、もう二人は梓の視界から消えていた。

どうしょうか悩み…二人が消えた方向へ走ろうとした梓に、後ろから声がした。

「どうしました?早くしないと、授業が始まりますよ」

その声に振り返ると、響子が立っていた。


「あっ!はい……」

仕方なく、梓は教室に戻ることにした。

そんな梓を見つめながらも、響子は輪廻達が消えた方も見ていた。


(性目…。聞こえているか?やつらを追え!正体を探れ)

響子は思念を、学校内にいる性目に送った。

そして、目の前を通り過ぎた梓の後ろを歩きながら、

(五亡星の魔物か……?それとも……………)

先程、あのクラスをチェックした時、あの男からは、何も感じなかった。

(なのに…)

響子は、手の平が汗でびっしょりになっていることに気付いた。

(何という…魔力…)

それは、響子が今まで感じたことがない程の凄まじい魔力だった。

また心を読もうとしたが、読めなかった。

いや、読めなかったというよりも…暗黒なのだ。

心があっても、その心さえ飲み込むような…闇。


響子は、ぞっとした。