「あの時、聴いた…速水さんの歌が、今までで、一番感動した。楽しくって、元気がでた」

直樹の話をきいても、香里奈には、記憶がなかった。


「その時から…あたしが好き…だったの…?」

直樹は、首を横に振った。

「ただ…それがきっかけで、常に笑顔でいようと思った。暗くなっては、いけないと…それは守ってきた」

直樹は立ち上がった。

「高校に入って、しばらくは…あなたが、あの女の子とは、わからなかった。でも、元気で、いつも笑顔で…いつも輝いてた」

もう日が半分、山の向こうに沈んでいた。

もう黄昏も終わりだ。

直樹は、眩しそうに夕日を見つめ、

「そんなあなたに、惹かれて…あなたが、ダブルケイの女の子と知って、納得した」

「納得?」

「キラキラした笑顔の女の子だって…」

直樹は、夕日に目を細めた。

「夕日より、綺麗で輝いてて…」

直樹は、頭を抱えた。

「うまく言えない!くそ!」

地団太を踏む。

「好きな理由が…うまく言えない程」

直樹は、視線を香里奈に移し、真っ直ぐ見つめ、

「好きです」

ただ真っ赤になる香里奈。

好きと、何回言われただろう。

「え、えっと…」

香里奈は、しどろもどろになり、口を摘むんだ。

しばし無言。

「家まで送るよ」

直樹は、急いだ答えをもとめてなかった。

頷く香里奈。

2人は、歩きだした。

まだ…手は、繋げないけど。