「どうして、この公園にいるのよ。近くに大路公園あるでしょ!」

直樹は少し後退りしながら、説明する。

「近くの店で、発表会があって…」

「発表会!」

香里奈ははっとして、声を荒げた。

びっくりする直樹。

「あんた…音楽やってるの?」

「え…ただ聴きにきただけで…」

香里奈は口ごもる直樹に、フンと鼻を鳴らすと、再びブランコに飛び乗った。

「だよね。やってるように見えないもん」

ブランコは、すぐに勢いを増す。

「だって、元気ないもん!」

香里奈はまた、飛び降り、直樹の近くに着地する。

「男の子はいつも、元気じゃないとだめ…じゃないと…」

香里奈は、鼻の頭をかきながら、

「あたしが、女の子に見られないのよね」

直樹は、そんな香里奈を見て、笑ってしまう。

「何がおかしいのよ!」

香里奈が叫んだ。



「香里奈!」

公園の入り口から、香里奈を呼ぶ声がした。

香里奈は声の方を見た。

「里美おばちゃん!」

里美は、香里奈に走り寄る。

「あんた、何してるのよ!あんたの出番、とっくに過ぎてるのに!みんな、捜してたのよ」