「え…あっ!えっー」

言葉が、しどろもどろになる香里奈。

「で、でも!ナオくんは…」

「わかってくれている」

和也は、香里奈から視線を外し、

「と…でも、言いたいのか?」

和也の何とも言えない…
少し冷たさを感じる口調に、香里奈は黙ってしまった。

「別に…速水を責めてる訳じゃない」

少しすまなく思ったのか、和也は口調を変えた。

「ただ…」

「ただ?」

「口にだして、言葉として伝える」

和也は、香里奈を見た。

「それが大切だ」

和也は、香里奈を追い越し、

「他人の気持ちなんてわからないから…。特に、好きな人なら、不安になるさ」

もう駅前に着いた。

和也は、手を上げ、

じゃあと、一言いうと、
地下鉄への階段を降りって行った。

香里奈はその背中を、ただ見送った。