「そうかあ…そんなことは…」

ないと言いかけて、

和也は言葉を止めた。


(俺なんかと釣り合わない)

(別れた方がいいかものしれない)


和也の脳裏に、香里奈のステージを見た後の直樹が、口にした言葉がよぎった。

「チッ」

和也は軽く、舌打ちした。

「ふ、藤木くん…」

香里奈の声で、藤木は、我に返った。

「あたし…」

香里奈は今の舌打ちを、自分にされたと、思ったらしい。

戸惑う香里奈に。

「ご、ごめん…今のは違うんだ」

和也は慌てて、謝った。

そして、頭をかくと、言葉を探しているかのように、言葉を詰まらす。

「何て言ったらいいのか…」

香里奈は、和也の答えを待っている。

「うーん」

言いたいことは、あるのだが、それを、どう伝えたらいいのか…。

しばらく悩んで、和也は、ストレートに告げることにした。

「速水…」

「何?」

「お前って…直樹に…」

和也はまだ、躊躇っていた。

「ナオくんに…?」

和也は、腹を決めた。

「直樹に…ちゃんと、好きって、言ったことがあるのか?」