(何なの!)

心の中で叫びながら、里緒菜は無言で、真正面のフェンスにもたれる優を、軽く睨んだ。

別に、

昼休みの屋上…。

誰が来てもいいんだけど。

和也や直樹、

そして、

イエローホール事件で有名になった香里奈。

この3人がいる屋上には、みんな、遠慮や恥ずかしさで、堂々と入ってくる者はいなかった。

妙な空気を感じ、直樹が、里緒菜の近くに来た。

「どうしたの?」

香里奈と恵美、祥子は、今朝から続く…お笑い談義に、花を咲かしている。


「別に、何でもないわ」

里緒菜の口調に、直樹は、彼女の視線の先をたどった。

正面の女の子…。

女の子は本を読んで…

いなかった。

本から、瞳だけを覗かせて、真っ直ぐに、里緒菜を、
いや、

直樹を見ていた。

直樹は少し驚き、女の子と視線を合わせた。

この視線は…。

直樹には、思い出せなかった。

女の子は、本を下げた。

顔のすべてが、露わになる。

「!?」

満面の微笑み。

それが、直樹に向けられていた。