まっすぐ、マンションに帰った香里奈は…リビングに入って、

ぎょっとした。

里美がいたのだ。

「おかえり」

「た、ただいま…」

驚く香里奈に、里美は微笑み、

「昼ごはん、つくったから…着替えたら、食べなさい」

「う、うん」

香里奈は慌てて、隣の部屋にいこうとして、

ソファの角につまずいた。

「慌てない」

里美は、料理をテーブルに運びながら、ため息をついた。

着替えを済まし、

ソファに座ると、もう…ちらし寿司が用意されていた。

「うわあ」

感嘆の声を上げると、

「久々だ!」

香里奈は、手を合わせ、

「いただきまあす」

と、箸を持った。

里美はキッチンから、香里奈の様子を見守る。




「ごちそうさまでした」

香里奈が、箸を置くのを待って、

里美は、キッチンから出た。

「あんた…行く気でしょ」

「え?」

お茶を飲もうとした香里奈の動きが、止まる。

「あんたの考えなんて、すぐわかるんだから」

そして…里美は、あるものを手に取ると、香里奈の横に置いた。

「これは…?」

それは、古びた楽器ケースだった。