タクシーに乗り込んだ瞬間、

里美から、イエローホールの一件を説明された明日香は、

行き先を変えた。






「まったく…誰に似たんだか…」

明日香は、カウンターに座りながら、

ワイルドターキーをロックで飲んでいた。

「さっき、香里奈から電話があった…無事みたい。飯田くんといっしょだし、大丈夫だわ」

里美が、カウンターの奥から出てきた。

ダブルケイ。

久々に、明日香は里美と2人でいた。

和恵は、もう2階で寝ていた。

明日香は、ワイルドターキーの入ったグラスを、里美に手渡した。

里美は受け取り、

「さっきの話…」

里美は、明日香の前に立ち、

「あたしに、影響されたと言いたいわけ?」

明日香はクスッと笑うと、一口飲んだ。


「それにしても…ステージで、啓介さんを殴るなんて…」


里美も一口飲む。

苦さに、少し顔をしかめる。

「やっぱり…あたしに似てないわ」

明日香は、グラスを傾ける。

「何よ。あんた、この前…暴漢をやっつけてたじゃない」

里美が睨む。

「あれは護身…粗暴とはちがうわ」

「どうせ、あたしは粗暴ですよ。確かに、香里奈は…昔のあたしに似てるところが…」