「あんた、何てことを!」

ティアは、香里奈に平手打ちを喰らわした。

「コンサートが、むちゃくちゃだわ」

香里奈は、羽交い締めにされながらも、ティアを睨んだ。

ティアはもう一度、平手打ちを喰らわそうとした。

香里奈は、目を逸らさない。

ティアは、手を振り上げた。
その瞬間。

「香里奈さん!」

直樹が、その場に飛び込んで来た。

直樹は、香里奈を捕まえているカードマンに体当たりをし、殴り倒した。

「何?」

ティアたちが、呆気にとられている間に、

直樹は、カードマンから、香里奈を引き離した。

「直樹!避けろ!」

ステージ袖の控え室に、和也も飛び込んできた。

手には、通路に置いてあった消火器を持って。

和也は、ティアたちに向かって、ノズルを引いた。

白い液体が、煙となって、周りを包む。

「和也!」

「行くぞ!」

直樹は、香里奈の手を引いて走る。

和也は、消火器を置くと、二人の後を追う。

通路にある消防ベルを片っ端から、押しながら、

置いてある消火器を次々に、ノイズを開けていく。

ベルの音と、白い煙がアリーナに流れてくると、

観客は、パニックに陥った。