「あら、飯田くん。香里奈だったら、上よ」

里美の返事に、二階に上がっていいのか…戸惑う直樹。

「ただいま!」

近くに、遊びに行っていた和恵が、帰ってきた。

直樹を追い越す。

「和恵ちゃん!香里奈、呼んで来て!」

里美は、和恵に告げた。

「はあい!」

素直に返事して、和恵は二階に上がっていく。

「お姉ちゃん!」



しばらくして、香里奈が降りてきた。

直樹と目が合い、

バツが悪そうに、香里奈は目をそらした。

「速水さん…」

香里奈は、直樹を見ないようにしながら、

「外いこうか」

香里奈は、裏口に出た。

直樹も続いた。



外に出ると、すぐに直樹はきいた。

「速水さん…どうかしたの?一人で帰って…」

「別に…ちょっと、体調が悪かっただけ…」

香里奈は、視線を合わせずに、こたえた。本当の気持ちを、知られる訳にはいかない。

「大丈夫だから…」


「どうかしたの?」

「どうもしないよ」

目を伏せる香里奈。

直樹は一歩、香里奈に近づいた。

ビクッとして、香里奈は一歩下がった。

直樹は足を止め、

「俺が…何かした?」

「何してないよ…」

時間が止まった二人。

沈黙が続く中、

カザッと、何かが倒れる音がした。