「わかってるはずだ!お前では、啓介に勝てないと」

サミーの言葉に、明日香は悲しく微笑んだ。

「そうかもね…」

「お前と啓介の音は、対照的だから…うまく融合する。だから、啓介はお前と組んだはずだ」

明日香は、視線を前に向けた。

「そうだったわね…」

「お前じゃ…飲み込まれるだけだ!」

「それでも!」

明日香は叫んだ。

「あたしは、行かなくちゃならない。啓介の妻だから」

「明日香…」

「今は…あの人に勝てる歌手は、いないかもしれない…だけど、あたしはやらなければならないの」

明日香は振り向き、サミーを見つめた。

「ありがとう、サミー…。でも、あたしが止めなきゃ…」


「明日香…」

「あたしには…あの人が、苦しんでいるように思うの…だから、絶対…行かなきゃ…」

明日香は微笑みながら、スタジオを後にした。