「やればできるじゃん」

舞台を降りた里緒菜に、美奈子は微笑んだ。

「部長のおかげです」

里緒菜は、頭を下げた。

「やめろよ。そんなこと…お前は、役者の才能があるんだから…」

美奈子は照れたように、鼻の頭をかいた。



「里緒菜!」

体育館の舞台袖に、祥子と恵美がやって来た。

「祥子、恵美!」

「よかったよ!あんた」

「最高!」

「来てくれたんだ!ありがとう。二人!」

3人は、ひとしきり抱き合った。


「香里奈は?」

里緒菜の問いに、二人は目を見合わせ、

「来てたんだけど…」

「先に帰っちゃった…」


3人の会話を聴いていた直樹は、

3人の輪に入ってきた。

「速水さんは、帰ったの?」

祥子は頷き、

「うん。何か…よくわかんないけど…」

「気分が悪そうだった…」

2人の言葉をきいて、

「そうか…」

直樹は、心配そうに、つぶやいた。

その横で、里緒菜は……直樹の横顔を見つめていた。