~支配 side詠~
ガラガラガラ…
光がはいって来るなり、みんな口々に悪口を言う。
チっ…光も懲りねえな。もっと言ってやれ!!
でも光は、またいつも通り、なんともないような顔で、私の前を通り過ぎて行った。
いつもならキレているところだが、今日は、笑ってしまった。
なぜなら…
「っ! きゃあぁぁ!!」
「なによ、うるさいわね・・・・キャアア!! なによそれ! ゴキブリ!?」
光の机に、ゴキブリを仕込んでおいてもらったから♪
私は笑いをこらえて、あえて優しく光に言った。
「光。反省してるんでしょう? みんなのために、それ、捨ててきてよ。」
「え…でも、なにで…」
よほど嫌なのだろう。私でも嫌だもん。でも、私に逆らうなんて、いい度胸じゃない。素直に従えばいいのに。次はちょっとキツめに言った。
「手づかみに決まってるじゃない!」
光は震える手で、1匹ずつゴキブリを捨てていた。
うふふふふ、いい気味。
やがて、先生が来て、お遊びタイムも終了。でも、あの現場を先生に見られても、何の心配もいらないんだけどね~。だって、あの先生には、光が悪いって伝えてあるし、なんて言ったって、私は、教育委員会会長の、養子なんだから。ずっと子どもができなくて、しかも、理想像が細かすぎて、ぴったりな子も見つかんなくて、やっと見つけたのが、この私ってわけ。だから、両親とも私に溺愛で。
私に逆らう教師なんて、いないんだから。たとえ校長でもね。
私はこの学校の支配者なのよ!!!

「じゃあ、これで授業は終わります。」
やっと4時間目終了! 私の一番好きな時間。
「今日も、お仕置きだな。」
私は小さく呟いて、光のもとへ向かった。
そして、いつものように、お昼抜きの刑にしてやろうとしたら、初めて抵抗してきた。
「っ!! やっ…めて!!」
はあ? なにやってんの?
そう思っていたら、佐柄の一言で、一気に教室は盛り上がった。
「俺、わかっちゃったんだよ!! きっとこいつ、せっかくお母さんが早起きして作ってるのに~…とか思ってんじゃね!?」
それを聞いた瞬間、私の中に、怒りが生まれた。
光に何言ってんのよ…! 光には親がいないの!! あんた達みたいな平民どもに、親のいないやつの気持ちがわかるか!? 光の気持ちが分かんのは、私と光夜だけよ!! 
「アハハハ! まさかのマザコンですか!!」
……マザコン…? 光はマザコンなんかじゃないって言ってるじゃない!!
「違う…」
無意識で、そんな言葉が出ていた。
その瞬間、私はハッとして我に返った。
…今の発言、みんなに聞かれてたらヤバくない…? だって、これって、光を守る発言だよね…? 
私は焦りを隠すために、少しイヤミっぽく言った。
「マザコンとか、マジキモイんですけどぉ~!!」
みんなは笑ってくれた。
よかった~…、さっきの言葉、バレてない。
そのあと、私はある男に呼ばれて、二人だけの秘密の場所へ向かった。

あんたに何言われようが、私は変わる気ないんだから…。