~初友~
入学式、疲れたあー…
私の代表挨拶中、周りは私の名前の話題で盛り上がっていた。
あまりにも悲しくて、原稿だけに集中した。
新入生退場後、私は、クラス表を見に行くと…
「人、多っ!」
まあ、学校だからな。でも…
ザッ!
一斉に、避けられた…。 だけど…
なんか、暴走族の総長になった気分〜♪ そしたら、
「何アイツ。避けられて笑ってるとか、ドMかよ。」
「アハハハ!! 泉乃(いずの)ウケる〜!!」
「え? 里羅(りら)もそう思わない?」
「思うから笑ってんじゃん!!」
「「ギャハハハハハ!!!」」
あ、あの2人、入学式の人だ。品の無い笑い方。まあ、ああいうオシャレな人が、モテるんだろうな。
みんなが道を開けてくれたおかげで、クラス表が見やすいよ!
えーっと、私は… あった! 2組だ!
早くこの場を立ち去りたくて、走って教室まで行った。
友達出来るかなぁ?
そんな期待を抱いて、ドアを開けた。
「「うっわ、最悪。」」
「「ハモったし。」」
「「はー…。」」
まさかの、
「なんでお前と同クラなんだよ…!」
里羅と同じクラス…。しかも、
「「席となりだし!!」」
あーあ、これからが心配だわ…
そして、私は、ひとつ異変に気付いた。
私が立ち上がり、動くと…
道があく。
あからさまに、避けられてる。しかも、クラス全員に…。
うわぁ…、今までに無い経験…さすがに、悲しい…
やっぱり、どこ行っても、馴染むのは、難しいかな。
って思ってたけど…!? ………ん? ……ん!?
「アキラさんアキラさんアキラさーん!!!」
………誰⁉︎ え、マジで、誰⁉︎
「私、アキラさんと同じクラスになったものですが、私、アキラさんと同じなんですっ!」
「え…? 何が? 私、あなたみたいに、カワいくないよ…?」
「いや! カワいいだなんて…そんなぁ……じゃなくて! 私の名前です!!」
「私と同じ、「光」って書くの? あっ! ひかりちゃんか! 似合う〜!」
「それも違います! ちょっとここじゃ嫌なので、屋上で…。」
「あ、違うの? あーそう…。って、ダメでしょ!! 今から担任の紹介だよ⁉︎」
「あぁ、そうでした。まぁ、いいですよ。後々分かりますから。」
「そう? じゃ、その後で。」
その後2組に来た担任は福画 絵恵(ふくが えみ)という先生。去年教師になったばかりらしい。担当科目は美術。
そして、私の一番嫌いな自己紹介。
それで、初めて知ったことがある。
それは、里羅は、波神 里羅(はがみ りら)って言うんだって!!
まさか、里羅が、あの大手お菓子メーカー、『波神菓子』の一人娘とは!!
びっくりしたのも束の間、里羅と出席番号が近い私は、すぐに順番が回ってきた。
早く終わりたい私は、早口で自己紹介をした。
「私の名前は、みなさんが知っている通り、男の子らしい、実成 光です。私のことは、今後一切忘れていただいて結構なので。」
急いで座ったら、
「え? 実成さん? さすがに忘れてもらわなくても…」
…担任に話しかけられた。
「いや、いいんです。そもそも、覚える気無さそうなので。」
「あら、本当ね。っじゃなくて! じゃあ、私だけは覚えておくわ!」
…認めてんじゃねーよ!!
「いや、当たり前だろ? 先生でしょ?」
「実成さんって、意外に毒舌なのね…。」
「お前らにだけだし。」
ってか、お前らのせいなんだよ!
ふと、周りを見てみたら、みんなが私の方を見ていた。
…なんだ。みんな聞いてくれてんじゃん!!
と、喜びに浸っていたのに、クラスメイトの一言で、悲しみに変わった。
「教師に向かって何バカなこと言ってんの?」
あぁ、やっぱり、私の話ちゃんと聞いてくれる人なんかいないんだよね。さすがにきついなぁ、この状況…。
でも、あの子の自己紹介を聞いて、私の悲しみは増した。
「私、は、サカタ カケルといいます…。よ、よろしく…です…。」
あんなにカワイイ子が…カケル…? 自分じゃないのに、すごいショックを受けた。私とは、比べものにならないよ…。
「へー! カケルだって! 良かったじゃん、光! 仲間いて〜」
里羅は、案外いいやつだった。『あたしのこと、里羅って呼んでいいよ。あたしも光って呼ぶから。今あんたと話せるの、あたししかいないんだかんね。感謝しろよ。』なんて言ってくれて。でも、まだ友達とまではいかなくて…。
「あ、うん。」
でも、喜んでいいのかな…?
「どうした光? 喜べよ!」
「あ、嬉しいよ! …ってか、里羅、大丈夫?」
「は? 何がだよ。」
「泉乃様が見てますよ〜。」
「へ? わっ! い、泉乃!」
「里羅サン? 私が今見てるこの状況はどういうことなのかしら?」
「も、もしかして…怒ってる…?」
「これのどこが怒ってないように見えんのよ!!!」
「ご、ごめん〜! だってえ、光に友達ができるかもしれないんだよ!? ありえなくない!? しかも、あんなにカワイイ子! まぁ? 泉乃の方が、断然キレイで大人っぽくて美人だけど?」
「あらあら里羅。ホメすぎよ? って言っても、まだ足りないけどね〜?」
「だって、泉乃に勝つ人は?」
「いないもの。」
「「ね〜!!」」
ハハハ…。あの二人って、バカ…?
「あ、あの…。」
「ん? あっ! カケルちゃん!!」
「突然なんですけど、光さんは、自分の名前に不満を持ったこと、ないんですか?」
「んー、ないって言ったら、嘘になるかな。ってか、敬語じゃなくて大丈夫だよ?」
「あ、は…うん。…だよね。でも、私、人の手助けをするのが、大好きなの。この名前のおかげで。」
「そうなの? どういう漢字?」
「えっと…、サカタは、坂田で、カケルは、架。坂田 架。「架」って字は、人を助ける、架け橋を架けてあげれる子。って意味なんだって。」
「そっか。私は、光(ひかり)のように笑顔が輝く子になるように。だって。」
「だから、光ちゃんは、何を言われても笑ってるんだね。そんな光ちゃんの中学校の友達とかに会ってみたいなぁ〜。」
「ごめん。それは無理。」
「え? 何で?」
「私、友達、いなかったから。」
「それ、本当!?」
「うん。何? 架ちゃん、嬉しそうなんだけど。」
「うん! 嬉しい! だって、光ちゃんの友達第1号だよ!? 嬉しすぎるよ!!」
「私なんかでいいの?」
「いいに決まってるよ!」
「ありがとう!」
やっと、やっとできた、友達。嬉しい。泣きたいくらいに嬉しいよぉ〜!