「そんなに心配しなくても、ちゃんと美味いから」
ほら、また嬉しい言葉を言ってくれる。
「男の子にお菓子作ったの初めてだから」
「俺も女子からお菓子をもらったの、お前が初めて」
大翔君はあんなにすごい人気あるのに、今まで誰からも貰ったことないっていう事実に驚いた。
バレンタインとかクリスマスとか、イベントごとは数えきれないくらいあるのに、それを全部断ってたってことだよね……?
目を丸くしながら聞いていたら、大翔君が今度はチョコレート味のマドレーヌを半分に割って、その片割れを私に渡してきた。
「ん。口、開けて」
「へっ? あ、あの……むぐっ!?」
口を開いた途端に、鼻孔に香るチョコレートの甘い匂い。
同時にふんわりしっとりした食感が口の中に広がる。
「美味いだろ?」
まさか、大翔君が食べさせてくれるなんて思ってなかった私は、ただ黙って頷き返すだけだった。