考え出したらキリがなくて、その考えを振り払うように頭を左右に振る。
鞄はあったからまだ帰ってないはず。
そう思って、教室を出ていく。
家に帰れば渡せるけど、やっぱり今すぐに渡したい。
思い当たる場所をあちこち探してみるけど、どこに行っても大翔君の姿は見つからなくて、進んでいた足は速度を落としてピタッとその場に止まる。
踵を返して、来た道をゆっくりと戻る。
行き違いになっちゃったかな……。
しょんぼりしながら下を向き、ひとりトボトボ歩いていると、
――ドンッ!
「きゃっ……!?」
下を向いていた私は、誰かとぶつかってしまったみたいで、ぶつかった反動で2、3歩後ろによろける。
「っと、大丈夫?」
グッと強い力で引っ張られて、転ばずに済んだことにホッと安心していると、頭上から声が降ってくる。
顔をあげると、サラサラの栗色の髪に左耳にブルーの綺麗なピアス、赤フレームの個性的なメガネをかけて、そのレンズの奥から覗く瞳は、柔らかな印象を放っている。
整った顔立ちをしている男子生徒が目の前に立っていた。
ボケ~ッとしていた私に、その男子生徒は顔を近付けて覗きこんできた。