今日はあいにくの雨。
朝から何層にも重なった灰色の雲から、雫が落ちてきている。
こういう日は湿気が多くなるから、髪がバサバサになって憂鬱になる。
そんな気分を吹き飛ばす甘い香りが鼻を掠めていく。
今は調理実習の時間。
グループに分かれて、好きなお菓子を作ることになっていて、6人グループが7組できている。
私は、もちろん栞と同じグループ。
大翔君と宮内君は同じグループで、私たちとは別々。
だからさっきから大翔君のグループにいる女子たちの声が耳に入ってきて、気になって仕方ない。
「松坂君て料理得意なの!?」
「え~、すごい! カッコイイ!!」
「でしょ~。大翔にかかれば、お菓子作りなんてちょちょいのちょいだよ」
泡立て器を片手に、なぜか誇らしげに胸を張っている宮内君。