「誰が野獣だよ。このオレのルックスに対してなんてこと言うんだ!

女の子へのスマートなアプローチの仕方を伝授してやってるというのに、この生徒は本当に可愛くない」



「誰も頼んでないし、どっからどう見てもチャラいお前から伝授を受けようとも思わない。
それに、いつ俺がお前の生徒になったんだよ。

チャラい授業なんて冗談じゃねぇ。
ハッキリ言ってお断りだ」



どこにいても、どんなことをしていても目立つ2人は、行きかう人たちの視線を集めていた。



「ほほぅ。あんたのダンナがわざわざ迎えに来てくれたみたいだね?

まりやってば、どんだけ愛されてんだよー!」



微笑ましく2人のやり取りを見ていた私を栞が背中からドンッと、勢いよく押してきた。



「わわわっ……!」



完全に気を抜いていた私は、押されると思ってなくて、前のめりに転びそうになる。



地面に向かって倒れていく体に、ぶつかる時の衝撃が頭によぎって、ギュッと目を閉じる。



「あぶねー……。

米倉、こいつに怪我させるつもり?」



転んだ時の痛みに備えていたはずなのに、それは待ってても一向にやってこなくて、頭上で響く声につられて目を開いた。