「すごく緊張したのに、大翔君なんてもう知らないんだから」
真っ赤になって怒っていたと思ったら、近くにあったクッションを掴んで抱きしめると、今度は完全に拗ねてしまった。
さすがにヤバイと思って、拗ねてしまったまりやの機嫌を直そうといろいろ試してみることに。
「まりや、ごめん」
謝った俺には目も向けず、向こうを向いたまま完全無視。
「お前が一生懸命伝えてくれたこと、ちゃんとわかってるよ。
まさか、まりやから誘ってくれるなんて思ってなかったし」
嬉しかったのは嘘じゃない。
照れ屋なまりやが俺をデートに誘おうとしてくれてたなんて、思いもしなかった。
「ちゃんとお前の顔を見て返事したいんだけど、こっち向いてくれない?」
相変わらず無視したままのまりやに、ダメ元でお願いをしてみる。
真剣に伝えてくれたんだから、その気持ちに応えたい。
まりやがこっちを向いてくれるのを待ってると、チラリと目だけを向けてきた。
「もう、笑わない?」
やっと口を利いてくれたまりやに、静かに頷いて約束する。