「自分を偽ってできた友達が本当に心を許せる友達なの?」
篠原の話を聞いていた俺達は、小さく聞き返すまりやの声に反応する。
俺から離れたまりやは、静かに篠原の元へ近付いていく。
何をするんだろうと心配で見ていると、まりやはそっと篠原の両手を握る。
「栞は口調が強かったりするけど、裏表がなくて思ってることハッキリ伝えてくれるんだよ。
楽しい時も悲しい時も、辛い時も嬉しい時もずっと一緒で、素の自分を出せる相手なの。
仲良くなるきっかけなんて、探せばいっぱいあると思う。
自分が気付かないだけで、きっと篠原さんと友達になりたいって思ってくれてる子はいる。
あの2人だって、きっかけは何にしても篠原さんが友達って呼べる人なんでしょ?
だったら、これからは心で笑いあえるような努力をすればいいんじゃないかな。
上手く伝えられないけど、きっと素の篠原さんを見てくれる人達はいっぱいいるから」
まりやの言葉にポロポロと涙を流し始めた篠原は、その顔を悲しげに歪める。
「なんで……あたし、あなたのこと傷付けようとしてたのにっ」
しゃくりあげながら、まりやに問う篠原に、米倉がその答えを返す。
「まりやはこういう子なんだよ。
自分のことよりも相手のことをいちばんに考えて。
この子のいいところなんだけど、優しすぎるところがたまに傷っていうかね」
困ったように笑う米倉に、さっきまで泣いていたまりやは照れくさそうに笑っている。
それを見て俺も自分の中の怒りが収まっていくのを感じた。