——パァン!!



乾いた音が歩道に響き渡った。



幸いにも、人通りの少ない歩道で通行人がいなく、頬を叩かれて呆然とする篠原は、自分を叩いた奴を睨みつけた。



俺達も篠原を叩いた奴の行動に驚いていた。



「今のは、まりやを傷つけて泣かせた分とヒカりんを傷付けた分。
可愛くなきゃ誰も見てくれない? ふざけんなよ!!

あんた、本気で人を好きになったことあんの?
好きな人に振り向いてほしいから女の子は、自分なりに精いっぱい努力するんでしょ。

見た目も確かに大事かもしれないけど、いちばん大事なのはここだろ!!」



ここ、と米倉が自分の胸に拳をあてる。



「心がないのに、そんな奴に好かれたって誰にも気持ちが響くわけないじゃん!!
あんたはカッコイイ奴と付き合えればそれでいいのかもしれないけど、外見だけで付き合ってたんだと知った奴が、どんだけあんたのことを好きだったかって考えたことあんの!?

心があるなら自分が傷ついてきた痛みくらいわかるだろ!
あんたの我が儘でどれだけの人間が傷ついてきたかって考えたことあんの!?」



怒りで震える拳を自分の胸に置いたまま、米倉が必死に篠原に訴える。



そんな米倉の訴えに、まりやも不安そうに事の成り行きを見守っている。



「あたしだって、自分が最低なことしてるってわかってた……。
元カレ達に最低だって言われるたびに胸が痛くて。

でも、本当の自分を知られるのが怖かった。
本当の私は、中身は地味だし何の取り柄もなくて、中学時代も今の高校に入ってからも周りの目ばかり気にして、仲間外れにされないように必死に自分を作ってた。

カッコイイ彼氏ができれば自慢できるし、みんなも注目してくれるようになる。
だから可愛くなれる勉強だってたくさんした。
付き合っては別れてって、同じことを何度も繰り返してもやめられなかった」