今にも泣きそうになっているまりやを他の奴に見られないように、グッと抱きしめる。
偶然会った篠原が友達らしい奴等に、彼氏を紹介しろって言われていきなり俺のことを自分の彼氏だとか言い出した。
さも自分が彼女であるかのように振る舞う篠原に我慢の限界だった。
俺だけならまだいい。
だけど、まりやを傷付けるのだけは許せない。
「さっきから黙って聞いてれば、俺があんたの彼氏?
俺とあんたがいつ付き合ったの? 名前しか知らないのによくそんな嘘がつけるな。
俺が好きなのはまりやだけだから、他の女なんか眼中にねーよ」
なるべく声を荒げないように言ったつもりだけど、イライラしすぎて自分の感情を上手くコントロールできない。
「ヒュ〜♪ やるねぇ、ヒロ君」
「よっ! 松っちゃん男の鏡! 日本一!!」
麻生先輩と米倉が俺を茶化してくる。
大事な話してるのに、こいつらは……。
空気読めよと目で返せば、2人とも知らん顔する。
「純礼……これどういうこと?」
静かに俯いていた篠原は、友達のひとりらしい奴に声をかけられて、大きく肩を震わせていた。