「で、なんで先輩まで一緒にいるんですか」
谷山先生にまた雑用を押し付けられて、遅れてやってきた大翔君は校門にいる私と栞と宮内君の他に、ここにいる麻生先輩の姿に表情を曇らせる。
「なんでって、ねぇ〜? オレももう仲間でしょ。
それに、みんなを誘ったのはこのオレなんだけど」
私達に同意を求めて来る先輩になんて返していいのかわからない。
麻生先輩がみんなでカラオケに行こうと誘ってくれたんだけど、麻生先輩に誘われたことを聞いてなかったらしい大翔君は、ものすごく嫌そうな顔をする。。
「仲間とか言って、まりやに近付こうとか考えてんじゃないですか」
「いやいや。まりやちゃんは可愛いし、そりゃあ口説きたい気持ちは山々だけど……オレ振られてるしね〜。
しかも2回も!」
軽く言ってのける先輩に私の方が居心地悪くなる。
そ、そんなに大きな声で言わなくても……。
「2回も振られてるのに、それでもまりやの側をウロチョロしてるなんて、松っちゃんに喧嘩売ってんのも同然じゃん」
悪気がない栞の言葉にももう慣れているのか、麻生先輩は傷つくどころか開き直る。
「そうなんだよ。ヒロ君のオレへの当たりがキツイのなんのってね。
だからさ、傷心のオレを慰めると思ってみんなでカラオケいこ〜!」
ひとりで意気揚々と進んでいく麻生先輩を見ながら、大翔君と宮内君それに栞の3人が声を揃えて言う。
「どこが傷心なんだよ。
どう見ても、神経図太いだろ」
あまりの揃い具合に偶然とはいえ、私だけが笑ってしまった。