「松っちゃんがちゃんと言わないから、まりやが不安になっちゃったんだ。
あーぁ、まりやが可哀想……。
今頃まりやは麻生先輩に慰められてるんだろうね」
「おい、それどういうことだ?」
麻生先輩の名前を聞いて内心焦りを覚えた俺は、米倉に詰め寄る。
「今さっきまりやと帰ろうと思ったらさ、麻生先輩に先越されちゃったんだよね。
あたしは、忘れ物に気付いて教室に戻るハメになったんだけど」
そう答える米倉の声を聞きつつ、俺は急いで立ち上がると鞄を持って教室を出る。
全力で廊下を走りながら、俺を避けたまりやの態度を思い出して、何もできなかった自分を悔いる。
急いで靴に履き換えてまりやを探すために校門を出ると、いきなりぬっと人影が現れて慌てて止まる。
「ヒロト君そんなに慌ててどうしたの?」
待ち伏せしていたのは篠原で、それを無視して歩き出す。
「ねぇ、今日時間ある? 空いてるなら私に付き合ってほしいんだけど」
急いで歩く俺の後ろを歩幅の違う篠原が小走りでついてくる。
「無理。急いでるからあんたの相手してる暇なんてない」
周りをキョロキョロしながら歩き、まりやの姿を探す。