みんな言わないだけで、何かしらの悩みを抱えてるんだ。



来るもの拒まず去る者追わずで有名な麻生先輩だって悩みを抱えてる。



悩む理由は違っていても、みんな頑張ってるんだと思ったら、少しだけ気持ちが楽になった。



「まさか光君に慰められるとはね。ま、でもありがとう」



少し照れたように笑った先輩にオレも少しだけ恥ずかしくなる。



「で、どうするの？　これから」



少し話が逸れた本題を麻生先輩が再びオレにぶつけてきた。



「純礼が何を考えてるのかわからないけど、大翔とまりやちゃんの２人を傷付けるようなことだけは何があってもさせない。

あの２人はオレの理想であり、目標ですから」



大翔はオレには普段冷たいけど、それも愛情の裏返しだと思ってるから。



そんなアイツが好きになった子が悲しむようなことだけは、大翔の親友としてできないし、させるわけにいかない。



オレにとって大翔もまりやちゃんもすごく大切な友達だから。



「そっか。光君もオレと同じなんだ。

でも、違うのはオレの場合はたぶん……初恋は失恋で気付かない間に終わってるかもってことかな」



苦笑しながら、また歩きだす先輩の後ろ姿を見ながら思う。



本当は自分の気持ちに気付いてるのに、それを冗談みたいにしてしまう。



好きになれる子が側にいるのに、どうしようもできない気持ちを抱えてる。



麻生先輩も意外と不器用な人なんじゃないかって。