だけど、思ってるだけで口に出すことも態度に示すこともできない自分はやっぱり、意気地なしだ。
オレもいい加減に前に進まないと何も変わらないのに。
「まりやちゃんとヒロ君を見てると、本当に微笑ましくなるくらいお似合いの2人だなって思う」
また考え込んでいたオレに、麻生先輩は独り言のように呟いた。
オレと同じことをこの人も思ってるんだと初めて知り驚く。
「センパイは、まりやちゃんのこと……」
その先は口にすることはできず、そんなオレに麻生先輩は緩く首を振る。
「ヒロ君よりも先に出会ってたら少しは変わってたのかもね。
本当にヒロ君のことが大好きで、ヒロ君もまりやちゃんのことを心から大切にしていて。
なんか2人を見てるとさ、自分は何やってんのかなってたまに思うことあるわけ。
オレは光君とは違う理由だけど、本当に本気で好きになった子が今までいないんだよ」
あまり話したことなかった麻生先輩にも、恋愛に関する悩みがあったんだと、少しだけ親近感が湧く。
本当に少しだけだけど。
「初恋もまだだなんて、高校生にもなって男なのに笑っちゃうだろ?」
自嘲気味に自分を笑う麻生先輩にオレは静かに首を横に振る。
「そんなことないっすよ。
初恋なんて気付いたら始まってるものだし、それを初恋と認識するのだって人それぞれでしょ。
オレだって、本気で恋愛できる相手を探し求めてるから、麻生先輩のこと笑ったりなんてできませんよ」