「うわ……。
さっきまで晴れてたのに、いきなり雨とかありえねー」
授業が終わり昇降口で靴を履き換えて外に出ると、灰色のどんよりとした雲から大粒の雨が降っていた。
今日は降るなんて言ってなかったのに。
俺の横で光が鞄の中に折り畳み傘が入ってないかと漁る音が聞こえる。
俺は空を見上げながら、先に米倉と帰って行ったまりやのことが気になっていた。
あいつ傘持ってたかな。
濡れてなきゃいいけど。
「うぉ。マジで傘入ってないじゃん」
ひととおり鞄を探り終えたらしい光ががっくりと肩を落とす。
その光を気にすることなく、涼しい顔で鞄から折り畳み傘を出して開いた俺の手を光がすかさず掴む。
「俺は男と手を繋ぐ趣味なんてないんだけど」
掴まれた手を見ながら、こいつが言いたいことがわかる俺は手を払いのける。
「そんな冷たいこと言うなよ〜。
俺達は大のつく親友じゃないか。
だから、その親友の光君を助けると思って傘にい・れ・て」
語尾にハートマークがついてきそうな気色悪い声で俺にお願いをしてきた光。
当然、俺が素直に入れるはずもなく聞えないフリをする。