「やぁやぁ大翔君! 今日もイケメンだね」
教室に着くなり、ここ最近にしてはいちばん元気じゃないかと思う光が声をかけてきた。
ていうか、こいつ元に戻ってる気がするんだけど。
篠原のことでずっと悩んでた光がこんなに元気でうるさいのは久しぶりに見る。
「朝っぱらから何言ってんだお前……。
なんか悪いもんでも食ってきたか。ピカちゃん」
「ちょっと〜!! それ禁句だって言ったでしょ!
それに悪いもんなんか食ってないし!
オレは至って健康な朝食を摂ってきてだね」
「あっそ。だから無駄に元気なわけだ。
お前は落ち込むくらいがちょうどよかったのに」
「何それ。落ち込むくらいがちょうどいいって、普段はうるさいとでも言いたいの!?」
「わかってんなら聞くなよ」
「もうヒロりんてば〜!
オレのこと心配してたくせに素直じゃないんだから」
ふふふと気味悪い笑いを浮かべて俺を見てくる光のこめかみめがけて、グリグリと両手で作った拳を当ててやる。
「いったぁー!! 痛い痛い! やめてぇ〜!!」
俺のグリグリの刑から必死に逃げ出した光は、こめかみを抑えて涙目になっていた。
「ちょっとは手加減しろよ!
このドSツンデレ大魔王め」
「あ? てめぇ……。
俺がお前のために時間を割いていろいろと相談に乗ってやったのに、その恩を仇で返す気か?」
冷たく睨み返して光に近付くと、後ろから我慢できなかったというように爆笑する声がした。