「そんな顔しなくても大丈夫。
まりやも松っちゃんもお互い何年想いあってきたと思ってんの。
あんた達の気持ちに勝てる奴なんて、この先いくらライバルが現れたっていないんだから」
「栞……ありがと」
私を元気づけるために栞が言ってくれたこと、素直に嬉しかった。
それでも、一度芽生えた不安はなかなか消えてはくれなくて、それは家に帰ってからもずっと続いていた。
「ただいま」
大翔君には心配かけたくないと、リビングに入る前に笑顔を作る練習をして声をかける。
「お帰り、まりや」
夕飯の準備を済ませてソファに座ってテレビを観ていた大翔君は、振り向いて笑顔で迎えてくれた。
たったそれだけ普通のことなのに、今すごく大翔君に甘えたくなる。
でも、そんなこと口にしたら優しい大翔君はきっと心配しちゃうから。
リビングの入り口で立ち尽くしていると、いつの間にか大翔君が目の前に立っていた。
「まりやちょっといい?」
「え?」
気付いた時には、大翔君の温かい体温に包みこまれて、抱きしめられていた。
なんで……。
何も言ってないのに、なんで大翔君はいつも私が思ってることわかっちゃうの?