「彼って、大翔君のことですか?」



「へぇ、ヒロト君って言うのね。

外見に負けないカッコイイ名前」



さっきからどうしてこんな質問ばかりするんだろう。



宮内君にずっと会いに来てた篠原さんがなんで大翔君のことを聞くの?



胸にモヤモヤしたものが芽生え、苦しくなる。



「ちょっと! あんた松っちゃんのこと根掘り葉掘り聞こうとして何企んでんの?」



私を頭から足の先まで品定めするみたいに見ていた篠原さんの肩を栞が掴む。



「別に何も企んでなんかないですよ。

ただ、ちょっとヒロト君に話があっただけなの」



“大翔君”



彼のことをよく知りもしない篠原さんが、大翔君の名前を呼んだだけで嫌だと思ってしまった。



クラスの子達が呼んでても、こんな気持ちになったことなんて今まで一度もなかったのに……どうして……。



「ヒロト君ってとってもモテるんでしょ?

あれだけの容姿だし、付き合ってて自慢になるでしょうね」



ふふっと口元を緩めて笑う篠原さんに、言葉にできない不安に襲われる。



「大翔君と付き合ってて自慢だなんて思ったこと……ありません」