「今日はあたしが奢るからさ、ドーナツ食べに行こうぜ」
5限の体育を終え、着替え終わって栞と昇降口で靴を履き換える。
バイト代が入って懐具合がホクホクの栞は、ドーナツがどうしても食べたいらしくさっきからこうして私を誘ってくる。
「たまには女同士でいろいろと話したいわけよ。
松っちゃんとまりやのこととか、まりやと松っちゃんのこととか」
「それ言い方が違うだけで、私と大翔君のこと言ってるよね」
クスクス笑う私の隣を栞が歩きながら「だって気になんじゃん!」と笑っていた。
私もたまには栞といっぱい話したいと思っていたから、行くと返事をしようと口を開いた。
その時。
隣を歩いていた栞がその場に足を止めて、眉間に深いシワを作る。
物凄く険しい顔つきで睨むように見つめる栞の視線の先を私も追ってみる。
そこには、学校の校門前に最近やたらと出来る人だかり。
その中心には誰がいるか、何となく私でもわかる。
「またあの女じゃない?
あれだけ嫌がられてるのに諦め悪すぎなんじゃないの」
人だかりの方へ歩きながら、栞がぶつぶつと呟く。