「まりやちゃ〜ん」



麻生先輩が本気の恋愛を教えてほしいと言い出して、私のところに来るようになってから早2週間が経とうとしていた。



相変わらず毎放課になると、時間ピッタリにやってきて3年の教室に帰るということを繰り返す麻生先輩。



最初は物珍しいものが見られると面白がってた栞も、こう毎日来られればさすがに嫌気がさしてきたらしく、最近じゃ麻生先輩が現れるとあからさまに面倒な顔を見せている。



「あんたも懲りない人だねぇ。

もはやここまで来るとストーカーの域でしょ、これは」



貶されようが嫌がられようが、そんなことを気にする様子は微塵もなく、むしろ嫌味を言われてもニコニコと笑っているんだから、その精神の強さは見上げたものだと思う。



「そんなこと言って栞ちゃんだって本当はオレに会えて嬉しいんでしょ?

わかってるよ、照れ隠しに心にもないこと言ってるってことは」



「先輩って松っちゃんが言ってた通りただのバカでしょ。

じゃなきゃ、こんだけわかりやすく嫌な顔してんのに気付かないって、バカ意外のどういう例えをすればいいのか逆に教えてほしいもんだわ」



いつの間にか、栞をちゃん付けする仲にまでなってしまった麻生先輩は、やっぱり神経が人よりも太いのかも。



これだけ毎日通われれば、逆に他人事みたいに冷静に物事を見てしまっている自分が恐ろしいとも思う。



そんな自分に苦笑しそうになったところに、スッと大きな手が私の肩に回ってくる。



「麻生先輩、いい加減諦めて下さい。

毎日毎日まりやのところに来て何なんですか?」



ここ最近ずっとイライラしてる大翔君は、麻生先輩が放課になると現れるのを見計らって、いつもこうして助けにきてくれる。



「あ、ヒロ君。今日もカッコよく王子様してるねぇ〜!
だってさ、毎日キミ達を見てなきゃ本気の恋愛が何なのかわかんないじゃない。

そのせいで、最近付き合いが悪いって彼女達から怒られちゃってさ、まったく参っちゃうよね。
モテるって気持ちのいいものだけど、何かを犠牲にしなきゃいけないなんてオレには辛すぎて……」