どんなに環境が変わっても、俺の心は何ひとつ変わらなかった。



月日にすれば8年は長いけど、また会えるってその約束があったから、離れてる間も頑張れたんだよな。



俺には、まりやだけだったし、他の女子から好きだって言われても、気持ちが揺らぐことは一度もなかった。



だから、どうしてまりやが特別なのかなんて考えたことがなかった。



「俺には、先輩が本気で好きになった人がいないっていう方が不思議で仕方ないですよ。

好きな奴が自分だけに向けてくれる表情や態度って、すごく特別で嬉しいものなのに。

あいつが笑うと嬉しくて、あいつが泣いてると元気にしてやりたいって思うし、守りたいものがあるって、すごい力になる」



片想いしてた時は、不安になったり、もっと俺のことだけ見てくれたらいいのにって思ったこともあったけど、

それとは違う、両想いになってから見えるものもたくさんあって、“あぁ……こいつのこと好きだな”って思うたびに、まりやをもっと好きになる自分がいる。



「特別だから好きなんじゃない。
好きだから、特別なんですよ。自分だけに向けてくれる笑顔があるって、すげぇ嬉しいですよ、先輩。

だから、これからもこの先もずっと、俺はあいつしか見てないんで他の奴なんて考えられない」



まっすぐに麻生先輩を見て告げる俺を、目を丸くして見返してくる先輩。



その後も呆然として、瞬きを何回か繰り返して、急に口元に笑みを作る。



「好きだから、特別か。オレにはそんな考え今まで一度だってなかったよ。
オレを好きだって言ってくれる子は、みんな大好きで特別だったからね。

本気で恋愛して何が楽しいの?っていつも思ってたけど……羨ましいと思うよ。
オレもヒロ君みたいに一途に恋してみたいって思っちゃうじゃん」



少しだけ寂しそうに笑った先輩に、本気で恋愛できない理由は光と違うけど、求めてるものは同じなのかもしれないと思った。



「はは。ちょっとオレらしくなくしんみりしちゃった。

あ、でも本気の恋愛とは何かを知るまでは、ヒロ君とまりやちゃんにつきまとう予定だから、よろしくね」



ニッと笑った先輩に、やっぱ無視して帰ればよかったと激しく後悔する。