「え? だってヒロ君についてなきゃ、本気の恋愛がどんなものかわかんないでしょ」
悪びれた様子もなく、平然と答える麻生先輩。
本気の恋愛がどんなものかなんて一度も考えたことがない俺は、この人が言ってることがやっぱり理解できない。
「本当に今までひとりも本気で好きになったことないんですか?」
念のためにもう一度聞いてみると、
「うん。だって、オレ女の子みんな大好きだから。
だから、初恋がいつ?って聞かれても、好きな子が多すぎてわからないんだよね」
この呆れた返答に、返す言葉なんて当然ない。
本当に本気で人を好きになったことないんだってのは、今のでよくわかったけど。
「だからさ、ヒロ君がどうしてひとりの女の子にあんなに夢中になれるのか不思議で仕方ないんだよ。
オレと同じで、ううん。それ以上にモテるヒロ君なのに、他の子になんてまったく興味ないし、冷たいし。
だから、まりやちゃんっていう女の子にもすごく興味があるんだよ。
こんなに女の子に人気のヒロ君の心を掴んで離さない、何か特別なものがあるんじゃないかって」
どうしてって、そんなの考えたこともない。
幼稚園の時に引っ越してきて、隣に住んでたのがまりやだった。
初めて会った日、俺はあいつに一目惚れしたんだ。
恥ずかしがり屋で泣き虫で、俺のあとをついてくるまりやが可愛くて。
だから、引っ越しがまた決まった時、本当は俺だって離れたくなかった。
まりやも離れたくないって泣いてたけど、俺は泣いてる姿よりも笑ってるまりやの顔を見たかったから。
だから、あの約束を残してまりやの前からいなくなった。
離れてる間もずっとまりやのことを想ってた。